首を横に振った ポケモン。 ポケモン

配達ヌメり

首を横に振った ポケモン

共倒れになって動けなくなっているポケモンたちも出てきてしまっている。 その時、空中で激しいぶつかり合いをしていたミュウとミュウツーが、バトルフィールドの真ん中に降りてきた。 お互い睨み合ったまま、バリアーを膨れ上がらせて攻撃をし合った。 その巨大なエネルギーは真ん中で衝突し、周りに強風を巻き起こした。 ホウソとコピーピカチュウも、飛ばされないようにお互いの体を支えた。 「・・・・・・」 ミュウが力をためた。 同時に、ミュウツーも同じ光を身に纏った。 二匹が攻撃を放つ、その直前にフィールド内に声が響いた。 「やめろ!!」 声に驚いたその場にいたポケモン全員が動きを止めた。 その声は、ホウソのものだった。 ミュウの方がホウソの近くにおり、ミュウツーはそのまま、ミュウは振り返って、ホウソを見た。 「みんなやめろ!!どっちが本物かなんて関係ない!こんな戦いに何の意味があるんだよ!!やめるんだ!!」 大声で叫んで、ホウソは少し息を切らせた。 しかしすぐに遠くにいるミュウツーに向かって言った。 「コピーを作って、みんなが戦って・・・そんなこと、誰も望んでない!みんなのトレーナーだって同じだ!」 「・・・トレーナーだと?人間に飼いならされ奴らと腐りきった関係にあるお前のようなポケモンに、何が分かる」 「トレーナーはポケモンと信頼し合ってる!俺は、ケミカのためならどんなことだってする、トレーナーとポケモンには、固い絆があるからだ!」 ホウソは負けじと叫んだ。 「人間と分かり合おうともしないお前に、この関係を貶す権利なんかない!!」 「人間は私を身勝手な理由で生み出し、そして捨てた。 信頼など存在するものか。 絆だと?・・・笑わせる」 ミュウツーは笑いながら言ったが、声には明らかに怒りが含まれていた。 手を、力強く握り締めている。 「お前がミュウと戦う意味だってない。 戦って勝った方が本物だなんて、それこそが間違ってる」 「・・・なんだと・・・」 バトルフィールド中にいるポケモンたちが、ホウソを見つめている。 ホウソは全員を見回し、目を閉じてから顔を上げた。 そして、まっすぐにミュウツーを見据えて口を開いた。 「お前はただ、力が強く作り出されただけだ!人間も、ポケモンも、その絆も、全てを力でしか否定することができない・・・。 ミュウツー!お前は・・・お前はただの、臆病者だ!!」 ホウソの言葉に、ミュウツーは目を見開いた。 そして、今までためていた力の全てを両手の先に集中させてホウソに向けて放った。 「黙れっ!!お前に・・・私の何が分かる!!」 ミュウツーを見ていたホウソの視界が、ミュウツーが放ったエネルギーでいっぱいになった。 それはホウソに向かって一直線に飛んできていた。 「あ・・・・・・!!」 ホウソは自分の後ろにいたコピーピカチュウを助けるために突き飛ばそうとしたが、間に合わなかった。 方向を変えたホウソの横から迫るエネルギー波に、ホウソが両手をかざして目を閉じた瞬間。 「・・・・・・っ!!」 ホウソの目の前で、大爆発が起こった。 しばらくの間、ホウソとコピーのピカチュウは衝撃波に耐えた。 しかしホウソたちは、全くの無傷だった。 隣にいたコピーピカチュウも、何が起こったか分からず目を瞬かせた。 その理由は、ホウソが顔を上げてすぐに判明した。 「・・・・・・ケミカ・・・・・・!!」 ホウソの前に、ケミカが両腕を広げて立っていた。 エネルギー波をまともに食らったケミカは、力を失ってゆっくりとうつ伏せに倒れ掛かった。 「・・・ホウソ・・・・・・よかっ・・・・・・」 ケミカは少しだけ目を開いた。 ホウソはケミカの横顔と目が合った。 「ケミカ・・・」 ケミカが倒れると、ケミカの帽子が横に転がった。 ミュウツーは両手を前に出したまま、驚いて動きが止まっている。 「・・・馬鹿な・・・」 ケミカがホウソを助けようとした光景を目の当たりにして、信じられないというように首を振った。 「馬鹿な・・・人間が、身を挺して・・・命を懸けて・・・ポケモンを守っただと・・・?」 幻か何かを見ているように、ミュウツーは唖然とした。 ミュウも無感情にその様子を見ていた。 「ご主人様ー!!」 「ケミカさんっ!」 「マスター!!」 ケミカのポケモンたちも、一斉に駆け寄ってきた。 それぞれのコピーポケモンたちも、遠巻きにその様子を見つめている。 ホウソは必死にケミカの肩を揺すったが、全く反応はなかった。 耳元で呼びかけても少しも動かない。 顔を寄せてみたが、ケミカは呼吸をしていなかった。 「・・・ケミカ・・・っ」 ホウソは呆然と、ケミカを見下ろした。 「ケミカくん・・・!」 「・・・ケミカ様・・・」 ポロニウムやアクチ、イットリが、ケミカに駆け寄ってきた。 フランシや、アネ゛デパミ゛に掴まって飛んできたクルスも、ケミカの足元で泣き出した。 「なんで・・・ケミカ・・・ばか、やろう・・・どうして・・・どうして俺なんか、かばうんだよっ!!」 ホウソは力なく地に伏せられていたケミカの手を抱かかえ、ケミカに縋り付いて叫んだ。 「・・・・・・」 ケミカのポケモンのコピーたちも、周りに集まってきた。 そして、それぞれ自分のオリジナルのポケモンの横で、一緒に泣き出した。 「ケミカ・・・っ、ケミカ・・・・・・!!」 ホウソの目からは、涙が溢れて止まらなかった。 コピーのピカチュウも、ホウソと一緒に隣で泣いていた。 すると、そのポケモンたちの涙の雫が、静かに倒れているケミカに向かって集まり始めた。 「・・・なんだ、これは・・・」 「なんだろう・・・」 ミュウツーとミュウも、不思議そうにその光景を見ていた。 涙の雫は光り輝き、ケミカに集められていく。 ケミカの閉じられた目が、僅かに動いた。 「・・・・・・ケミカ・・・」 目にいっぱい涙をためたホウソが、悲しそうに顔を歪ませた。 目を閉じると、大粒の涙が零れ落ちた。 ケミカの体が、突然白く光りだした。 ポケモンたちは眩しさに目を閉じた。 やがて光が収まり、ホウソはそっと目を開いた。 「・・・・・・う・・・ん・・・」 ケミカの手が、ぎゅっと握られた。 そして、薄っすらと目を開けた。 「・・・・・・ホウソ・・・みんな・・・」 ケミカは、ゆっくりと顔を上げ、体を起こした。 一番に視界に入ってきたのは、目に涙を浮かべた2匹のピカチュウだった。 自分を取り囲んでいたポケモンとそのコピーたちに、ケミカは嬉しそうに笑顔を向けた。 「ケミカさん!!」 「ご主人様・・・!」 ポケモンたちは、次々にケミカに飛びついた。 コピーのポケモンたちは、少し寂しそうな顔でその様子を見上げていた。 「・・・なあ、いいな」 「・・・え?」 「いや・・・ううん、なんでもねーよ」 ホウソは、ケミカに飛びつくのを他のポケモンたちに譲って地面からケミカを見上げている。 コピーピカチュウは、ホウソの隣で他のコピーたちと同じく寂しそうにケミカとそのポケモンたちを見ていた。 その時、空の雲が急に晴れた。 空には大きな満月が現れ、天井のないバトルフィールドを照らし出した。 エレメのカバンから、ひょっこりとボラックスが顔を出した。 3人のトレーナーたちも、何も言わなかったが笑顔で顔を見合わせた。 地面の近くにいたミュウツーとミュウは、ケミカたちを見下ろしながらふわりと浮き上がった。 「・・・・・・ケミカ、といったな」 「ミュウツー・・・」 ミュウツーがケミカに語りかけた。 「お前は私の前で・・・ポケモンと人間の絆を見せてくれた、そのことに・・・感謝している」 「・・・うん」 ケミカは両手をついて立ち上がり、ミュウツーを見上げた。 「・・・教えてほしい。 お前は自分のポケモンのコピーたちを、どう思っている?」 本物とコピーのポケモンたちが、全員驚いた。 ミュウは尻尾を揺らしながらケミカに尋ねているミュウツーの横顔を見ている。 「コピーとは・・・どういう存在だ?・・・お前は・・・自分のポケモンは、分かるのか・・・?」 「えっ・・・・・・」 突然の問いかけに、ケミカは思わず声を上げた。 そして、足元にいる自分のポケモンたちを見下ろした。 オリジナルのポケモンたちとコピーたちが、お互いに顔を見合わせた。 「わ・・・分かる?」 ケミカの前に2匹並んだピカチュウが恐る恐る言った。 ポケモンたちは、体の大きさも声も、手足も尻尾の長さも全く同じにコピーされている。 右にいるのはホウソだった。 ホウソは肩をすくめて苦笑した。 「分かんないよな・・・はは」 「俺だって、どっちがどっちか分かんないよ」 「自分で分からなくなりそうだよな・・・ははは」 「あははは・・・」 ケミカの反応を見るのが怖くて、2匹のピカチュウは同時に、同じように笑った。 「・・・・・・。 」 周りのポケモンたちも右かな、左かな、とひそひそと話している。 遠くから見ているマリカたちも、固唾を飲んで見守っている。 ケミカは、ピカチュウたちの乾いた笑いが停止するまでじっと2匹を見つめていた。 そして、やわらかく微笑み、2匹の視線と合うようにしゃがみ込んだ。 「・・・・・・あ」 両手を差し出して、ケミカは左のピカチュウを優しく抱き上げた。 ・・・それは、コピーの方のピカチュウだった。 ガッカリした様子を見せちゃダメだ、とホウソは抱き上げられている自分のコピーを真顔で見上げた。 また泣き出しそうになり、それを必死にこらえた。 「・・・みんな、本物だよ」 「え・・・?」 ケミカはピカチュウを抱き締めて、小さな声で言った。 聞き返したのは、耳元でケミカの声を聞いたコピーのピカチュウだった。 「コピーが偽物だなんて、そんなこと絶対にない。 生まれてきた命は、みんな「本物」だよ。 」 「・・・・・・!」 ピカチュウを抱いたまま腕を伸ばし、ケミカはピカチュウと向かい合った。 「きみはホウソから作られて、姿も性格も、何もかもホウソと同じだけど・・・ホウソって名前は付けないよ。 きみはホウソじゃなくて、生まれたばかりのピカチュウだからね。 違う名前をつけて、育ててあげるよ」 コピーのピカチュウはケミカを見つめ、目を見開いたまま また涙を零した。 ケミカはピカチュウを左手で抱え、しゃがんでホウソに右手を伸ばした。 「ホウソ、おいで」 「ケミカ・・・っ!」 ホウソはケミカに飛びついた。 腕にしっかりと掴まって、ケミカの肩に寄りかかって抱き締めた。 「・・・ミュウツー」 ケミカは満月の前にいるミュウツーを見上げた。 「きみは身勝手に作り出されたコピーなんかじゃない、ちゃんと「本物」として生まれてきたんだよ。 とても強いポケモンとして生まれてくるなんて、すごく素敵だよ。 そして、その強さと一緒に生きていかないといけない」 「・・・・・・そうか」 ミュウツーは自分の手を開いて、手のひらに視線を落とした。 ケミカは、ホウソが乗っている方の腕を上に向かって伸ばした。 「・・・ぼくと一緒においでよ、ミュウツー。 ぼくと一緒に行こう。 命には、みんな平等に幸せに生きていく権利がある。 生きていくってことは、辛いこと悲しいことがあるかもしれないけど、それと同じくらい・・・ううん、それよりたくさん、 楽しいこと嬉しいことがあるんだ。 ぼくはきみと一緒にいて・・・それを教えてあげたいんだ、ミュウツー」 ケミカの優しい声が響いた。 そしてその場にいた人間、ポケモン、全てがミュウツーの答えを待った。 ミュウツーは静かに目を閉じた。 幸せに・・・生きていく・・・か、と小さく小さく呟いた。 ミュウツーはミュウに視線を移した。 ミュウは何も言わず、笑顔を返して頷いた。 「・・・ケミカ、お前が私たちコピーの命の存在を肯定してくれたことに・・・私は初めて「嬉しい」と思った・・・。 私は・・・「ミュウのコピー」ではなく、やっと「ポケモン」になることができたのかもしれない・・・」 ミュウとミュウツーの体が、淡く輝き始めた。 「・・・・・・?」 コピーのポケモンたちの体も、同じように光っている。 そして、小さな光の粒をまきながらふわりと宙に浮かび始めた。 地上に残されたポケモンたちは、不思議そうに自分のコピーたちを見上げた。 次々に、ミュウとミュウツーの側まで飛んでいく。 いつの間にか、ミュウツーの後ろにはラッキー、ドードリオ、カイリューも姿を見せていた。 やがて、ホウソのコピーのピカチュウもケミカの手から離れて空に昇り始めた。 「あ・・・!」 ホウソはピカチュウに向かって無意識に手を伸ばした。 ピカチュウも、空中で振り返ってホウソに手を差し出して、少しだけホウソに触れた。 「・・・ありがとう、ホウソ。 俺も・・・絶対に、ケミカみたいな最高のパートナーに出会ってみせるよ」 「・・・・・・!」 ホウソ、と呼ばれてホウソはピカチュウを切なそうに見上げた。 しかし、軽く首を横に振って、そして笑顔を作った。 「頑張れよ!絶対に見つかる!」 「・・・ああ。 次 会った時は、覚悟しとけよ!」 「もちろん。 俺も負けねえからな!・・・・・・じゃあ、またな」 ピカチュウも満面の笑みを返し、最後は何も言わず手を振った。 そして、くるりと向きを変えて空に向かって飛んでいった。 マリカたちも、みんなのポケモンたちも駆け寄ってきた。 さらに高く、さらに遠くへ飛んでいってしまうミュウツーたちに、ケミカは呼びかけた。 「ミュウツー・・・みんな・・・・・・どこへ行くの?」 ミュウツーは、みんなの心の中に最後のテレパシーを送った。 「私たちは、この世界に生まれた。 それぞれポケモンとして相応しい場所で、ポケモンたちと共に生きていく。 私のトレーナーになれる人物が現れるまで・・・私は待とう。 それは、もしかしたらケミカ・・・お前なのかもしれない・・・」 聞こえてきたのは、初めて話したときよりもずっと穏やかなミュウツーの声だった。 空に消えて行ったミュウとミュウツー、そして自分たちのポケモンのコピーたちを、全員で静かに見送った。 「・・・・・・行っちゃった」 最初に言葉を発したのは、ケミカだった。 「あ・・・!」 「な、なんだ・・・!?」 急に足元が輝きだした。 ポケモンたちが飛んでいく時に纏っていたのと同じ色の光だった。 光は、フィールドに立っていた4人のトレーナーとそのポケモンたちを包み込んだ。 ・・・・・・そして。 「・・・・・・?」 気づけば、全員が最初にやって来たトキワシティの港の外にいた。 ケミカとフィジカは座り込むかたちで、マリカとエレメは地面に寝転んでいた。 それぞれのポケモンたちも、自分のトレーナーの近くに同じく倒れていた。 ケミカは身を起こして、辺りを見回した。 周りのみんなも、徐々に目を覚ましていく。 「・・・・・・あれ?」 ケミカは、辺りをきょろきょろと見回した。 「・・・どうしてぼくたち、こんなところにいるんだろう・・・?」 「ケミカ?なぜお前がここにいる」 「あれ、なんでみんなここに・・・?エレメもいるのか?」 「・・・んー?なんでだろ・・・おっかしいな、覚えてねーよ・・・」 4人は向かい合って、首をかしげたり頭をかいたりした。 何かを思い出せそうだが、どうしても思い出すことができない。 「・・・でもさ、何だか今・・・すごく自分のポケモンを、もっと大事にしたいっていう気持ちになってる・・・」 「え・・・なんで?ケミカも?」 「も、ってことは・・・マリカも・・・?」 マリカは自分のポケモンたちをしゃがんで抱き寄せながら、ケミカを見上げて頷いた。 「・・・俺は今、なぜだかポケモンをもっと鍛えてやろうという気分だな。 なぜかは分からないが」 海と、遠くの空を見ながらフィジカもそう言った。 嵐はすっかり去り、朝日に海が照らされ始めている。 「俺も、みんなをいい子に育てようって思ってる、なんでだろーな」 エレメは眠っているボラックスを抱っこしている。 そしてそのまま、他のポケモンたちを連れて歩き出した。 いつもの通り寝たままのエカポロは、ドードーのマンガンの背中に乗っている。 「エレメ、どこ行くの?」 「あー・・・とりあえずマサラに帰る。 なんか、じーさんに会いに行こうかなって。 またな」 「うん・・・」 エレメは、シリコンと話しながら歩いて行ってしまった。 後姿を見送ってから、ケミカはまた思い出せそうで思い出せないもどかしさに顔をしかめた。 その様子を見て、フィジカは腕を組んだまま顔だけケミカに向けた。 「無理に思い出すな。 きっと、俺たちに何かあったんだろう」 「えっ・・・!?」 「それが何なのかは思い出せないが・・・今俺たちがここにいるってことは、何かがあったんだ」 プロトアを撫でながら、マリカはフィジカを見上げた。 「・・・そうだよな、何かあったんだ。 でも、まあいいじゃん。 今、何も困ってないし」 「そうだけど・・・うん、そうだよね・・・」 徐々に昇り始めた太陽を見つめ、ケミカは静かに頷いた。 「さあ今日から特訓だ。 今から走ってトキワのもりを抜けるぞ」 「ええ〜・・・?」 「今からですかぁ・・・?」 ローレンシとハッパが疲れた声で言った。 「ついて来られない奴には朝食は抜きだ」 「そ、そんなっ!」 「分かったですよ!もうっ!」 フィジカはアインスタを抱っこして走り出した。 愚痴りながらも、ローレンシとハッパも後ろからついていった。 ユウロピだけは、フィジカだけを見つめながら飛んで行っている。 「ケミカはどうすんの?今から」 「え・・・今から?」 ポケモンたちをボールに戻しながら、マリカが尋ねた。 「決まってないけど・・・マリカは・・・?」 「俺?うーん、久々に家に帰ろうかな、ちょっと遠いけど」 「そうか・・・うん、気をつけて」 「ああ、またなー」 マリカも、ホノオグマだけを頭に乗せて歩いて行ってしまった。 そうこうしているうちに、太陽は海とは反対方向にしっかりと丸く空に浮かんでいる。 ケミカは、ポケモンたちを一匹ずつボールに戻し始めた。 そして、最後にホウソをボールに入れようとしたときに、突然その手を止めた。 「・・・どうした?」 「・・・・・・。 」 ホウソの問いかけにも答えず、ケミカはリュックを下ろした。 そして、中を手であさった。 「・・・・・・っ!」 リュックの中に目的の物を見つけた。 それは、ポケモンのふえだった。 それを見つけた瞬間、ケミカは少しだけ目を開いた。 「ケミカ?ケミカ、どうしたんだよ?ポケモンのふえがどうかしたのか?」 「・・・・・・あ、ううん・・・」 ケミカは二つに分かれていたポケモンのふえをじっと見てから、はめて元通りにした。 そしてリュックを背負い、いつもの笑みに戻った。 「なあケミカ、どうすんだよこれから?どこ行くの?」 「・・・・・・。 」 ケミカは、ホウソの言葉が耳に入らなかったらしく、海の向こうを見つめている。 返事がないケミカに、ホウソはケミカの体に駆け上がった。 「ケミカっ!」 「・・・わっ」 突然肩が重くなり、ホウソの声がしたためケミカは遅れて声を上げた。 その時、ホウソも小さく あれ・・・?と呟いた。 「・・・これ、最近言ったような・・・」 ケミカは海と空から視線を戻し、ホウソを肩から自分の腕に移動させた。 そしてぽん、と頭を撫でた。 「わ、なんだよ」 「・・・・・・ホウソ、ちょっとシオンタウンに行っていい?」 「・・・へ?なんで?別にいいけど・・・」 「うん・・・・・・ありがとうね、みんな」 ケミカは、海を背にして、眩しい朝日に向かって歩き出した。 ケミカの後ろで、遠い雲の間を光を振り撒きながら白い何かが飛んでいき、空の中に消えていった。

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サトシとピカチュウ、ポケモン達に冒険 (400ページ)

首を横に振った ポケモン

イッシュの街々では紅葉が始まっていた。 フウロの愛機は今日も風を斬る。 とはいっても貨物機なのだから、人を乗せることはあまりない。 だけれどブラックだけは乗せてあげてもいいかな、なんて考えたことに下心はないはずだった。 堂々とフウロを負かし、プラズマ団を止め、ゆくゆくはチャンピオンになるであろう彼に、フウロがいつも感じている風を切る気持ちよさだとか、見下ろす壮大なイッシュの景色だとか、遠くに見える街並みだとかを知ってほしいとただ思った。 同じ思いを共有したかったのかもしれない。 だから、初めて進んで貨物機に人を乗せるための行動をとった。 始め、彼は少し躊躇しながら首を横に振った。 フウロはブラックの前で貨物機に人を乗せるのを渋ったことがある、そのことを彼は思い浮かべているのだろうか。 確かにアララギさんには正直迷惑している、けれど貨物機だってフウロだって、人は選ぶ。 「君なら、乗せてもいいと思ったのだけど」 「乗りたいなんて言ったことないじゃないですか」 ブラックが放つ言葉はフウロにしてみれば失礼な言葉だった。 折角乗せてあげると言っているのに。 まあ正しいのはブラックの意見だ、これはフウロのエゴにすぎない。 だからこそ、悲しかった。 今時期は紅葉が綺麗だよ。 そう言い返した、まるでブラックの言葉は聞こえていないかのように。 ブラックは抵抗を諦めたのか、今度は首を立てに振った。 降参、そんな言葉が風に乗って聞こえた気がする。 やはりあまり気乗りのしないままのブラックの足を進ませながら、フウロは自慢の愛機を披露目する。 ブラックの瞳が変わった、まるで自分のポケモンを見つめるような、慈愛の籠もった視線だった。 何故ただの貨物機をそんな視線で見つめるかはわからない、彼が貨物機マニアなら別だけれど。 先にフウロが乗りこんだ後、ブラックも貨物機に乗った。 シートベルトを締めて、エンジンをかけて、荷物をなにも乗せていない貨物機がヒトふたりを乗せて空に上がった。 完全に空に上がりきり風に乗れたなら、操縦を機械まかせにして手をハンドルから離した。 自動操縦モードと言うらしい、私は使ったことがないため知らなかったが、アララギさんが言っていた。 手を離すと、それまで少しだけ目を輝かせながらイッシュの景色を上空から見ていたブラックがいきなりこちらを向いて、フウロの手を握った。 そして何もなかったかのようにまた外に目をやった。 フウロには紅葉の進んだイッシュの景色よりも握られている手の方が気になって仕方がなかった。 これなあに、ブラックの後頭部にむけて発せられた声。 少し手を握る力が強くなった気がした。 「フウロさんが落ちたら、大変でしょ」 きゅ。 今度は確かにはっきりと強く、握られた。 むしろ落ちる心配があったのは初めて貨物機にのるブラックではないだろうか。 今のフウロにはそれすらわからないほど混乱している。 その手を離すことが出来なかった。 したくなかった。 片手でハンドルは握れない、だったら降下もできないじゃない。 このまま飛んでゆけるところまで飛んでしまおうか。 最後には墜落してしまうの、死因はきっと愛のいたずらだ。 さすがにそんな話にはならない。 「どこまで行くつもりですか」なんてブラックの言葉で目が覚めた。 名残惜しく手を放してハンドルを掴む。 フキヨセシティへ戻った後、ブラックは小さくお礼を告げて貨物機から降りた。 フウロは空を飛んだ感想を要求する。 もっとゆっくり、そうだなハトーボーとかに乗せてもらうほうが俺は好きでした。 空を見ながらブラックが言う。 なんだかフウロはそう言われるような気がしていた。 彼は自由な人だから、誰かに用意された道は好まない、好きなように感じたまま行動をする人。 だからこそわからないことがある。 では手を握ってくれたその理由はなんだろう。 握られた手を見てもわかりようのない疑問だった。 「だから今度はポケモンに乗って空を飛びたいな、一緒にどうですか?」 ブラックはやはり空を見たままそう言った。 フウロはそんなブラックを見ながら、自分のポケモンに思いを馳せた。 フウロはひこうタイプのジムリーダーなのだから、ひこうタイプのポケモンに長けているのは当たり前のことだ。 私のポケモンはそんなにゆっくり飛んだりしないだろう、そう思った。 じゃあ彼のハトーボーに乗せてもらうのはどうだろう。 ハトーボーは小さいからきっと無理ね。 我慢して自分のポケモンに乗ることにしよう。 私が早く進みすぎないように、ブラックは手を繋いでくれるだろうか、今日のように。 その時にはわかるだろうか、ブラックが愛しそうに貨物機を見つめる、私の手を握る、一緒に空を舞う、その理由を。

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けたぐり

首を横に振った ポケモン

強い日差しが差し込むリビングのソファの上で世界一の強度を誇るアイスバーをしゃぶっているとパドルがご機嫌な様子で鼻歌を奏でながらステップを踏んで冷蔵庫を開け閉めしていた。 「なに、またなんか作るの?」 背もたれ越しにパドルに尋ねるとブンブンと首を横に振った。 パドルは両手を大きく広げるとまた閉じた。 まったく理解できないけどご機嫌なのでうまくいくといいねと言っておいた。 パドルは嬉しそうに後ろに伸びた触手を上下に跳ねさせるとまた冷蔵庫を開け閉めし始めた。 「それにしても…あっちぃなぁ…」 ぼやきながらアイスの棒をゴミ箱目がけて投げると目測を外して壁に当たった。 眉間に皺を寄せながらしぶしぶ立ち上がるとひんやりとした粘液が肌に触れた。 「もう開け閉めするのは終わり?」 パドルは俺の額に浮かぶ汗を拭うと代わりに粘液を塗りたくった。 「お前なぁ…」 額に付いた粘液を腕でぬぐい取って次弾に備えていたパドルの腕をつかむ。 「やらなくていいから」 そういうとパドルは構って貰えたと思ったのかブンブンと手を振り回し、嬉しそうに俺の横に座ってきた。 そして俺の背後に触手を伸ばすとそっと首筋を触ってくる。 触られた瞬間、変な声が出た。 むっとしてパドルを見るとしてやったり顔でこちらを見ていた。 あまりのうっとおしさに無視を続けていると飽きたのかぼんやりと天井を見始めた。 そこで俺はさっき外したアイスの棒をあるべきところに戻そうと重い腰を上げる。 すると何やら涼しい風がキッチンのほうから流れてくる。 換気扇の扉が開けっ放しだったかもしれないなと思いながらアイスの棒を拾ってゴミ箱に落とす。 「パドル~、換気扇開けっ放し~」 本人を見ながら言うと自分じゃないと言いたげに大きな顔の前で手を振った。 パドルじゃないわけないだろうと思ったがいくら暑いからとは言え、パドルに当たるのはお門違いだなと心の中に仕舞い込む。 まったく…とぼそっと言って視界の端でパドルを捉えると少し悲しそうな表情を浮かべていた。 もしかしたらパドルじゃないのかもしれない。 でも言ってしまった手前、もう引っ込みもつかない。 ぼりぼりと頭を掻きながらとりあえず閉めに行こうとキッチンに向かう。 「あれ…?開いてない…?」 その言葉を聞いていたのかいつのまにか背後に回り込んでいたパドルがこちらをじぃっと見ていた。 「ウッ………疑ったりしてごめん」 フンッと胸を張るとポンポンと俺の肩を叩いた。 そしてドヤァとパドルなりの精一杯のどや顔を決めると頭を目の前に突き出してきた。 軽く頭をなでてやると心底嬉しそうに笑っていた。 あぁ、やっぱりパドルはこうじゃなくちゃな。 そして自分の手に付いた粘液を見て微妙な気分になっているとゴンゴンと何かで殴るような音が部屋に響いた。 その音を聞いたパドルはパッと顔を上げて冷蔵庫に突進していった。 するとバンという音とともに冷蔵庫が勢いよく開き、 「どうも~、フーパ宅配便でぇす! パドル様ですか? ご依頼の『溶けない氷』をお届けに上がりましたぁ! では受け取り証明として手形を…はい確かにぃ。 ではでは、またのご利用をお待ちしていまぁす!」 とテキパキと手際よくパドルから手形を取り、冷蔵庫の中にいつの間にかできていたリングの向こうに消えていった。 そしてリングもポケモンの姿が消えるとともに消えた。 「…え、今の…なに?」 パドルに説明を求めると素知らぬ顔で俺に冷蔵庫の中に置き去りにされた今届いたばかりの氷をソファ前のテーブルの上に置く。 「ちょちょちょ…、今のはなに?」 そんなパドルに食い下がる俺。 パドルは俺を見てやれやれと言いたげにため息をつくと俺を軽々しく持ち上げてソファに座らせる。 そして俺の顔を見てはキラキラと目を輝かせてどう?どう?と目で訴えてくる。 「いや、まぁ、涼しいけど…さっきのは一体…」 俺の質問なんて聞こえてないかのように満面の笑みを浮かべて俺に抱きついてきた。 そこでまたさっきのは…と食い下がろうとした。 が、パドルの指に口を塞がれたおかげで聞けなかった。 ちらりとテーブルを見れば強い日差しにも負けない冷気を放つ氷がきらめいていた。 その氷から発せられた冷気が床を伝い、俺の足に触れた。 頭の先から血の気がゆっくりと下がっていく感じがした。 思えば最近、あまりにも暑くてパドルに構ってやれなかったなぁ。 もしかしたら寂しかったのかもなぁ。 などと思いつつ、パドルの頬を優しく撫でてやる。 「もしかして気を使わせちゃった?」 パドルは何も答えない。 その代わりにもっと撫でてと要望が飛んでくる。 太い触手の根元に申し訳程度に生えている小さな突起を押し倒すように撫でてやるとちょっと怪訝な表情を浮かべた。 「ちゃんと撫でるって、だからそんな顔しないの。 かわいいお顔が台無しだよ?」 そういうとパドルは表情を明るくして照れていた。 そしてベシッと俺の背中を叩くとクッションを使って顔を隠した。 その後のパドルはいつにもまして上機嫌だったのは言うまでもないだろう。

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